1999年から毎年5月に当財団が実施していた「中国高校生代表団」(毎回100名)の昨年の受入れはSARSの影響を受けて9月に実施され、東京をはじめ各地の教育関係者の協力を得て成功裡に終えることができた。先ほど日中両国政府は本年も引き続き高校生の交流を続けることを決め、当財団としては春季に第六回の訪日団を受入れる計画である。
「第五回中国高校生訪日団」一行100名は2003年9月11日から19日まで日本を訪問、東京、広島、京都、神戸、大阪を訪問、東京と神戸で日本の高校生と交流した。一行は中国教育部の曹志祥基礎教育局高校教育課課長を団長に北京市、上海市、海南省、陝西省、河南省、広東省、山東省、山西省、安徽省遼寧省、吉林省、福建省、江西省、新疆ウイグル自治区、内蒙古自治区、寧夏回族自治区の2市、11省、3自治区60校から参加した。
一行は東京で外務省表敬、国会議事堂参観、日本科学未来館、六本木ヒルズなどを参観し、都立三田、飛鳥、北園高等学校の3校に分かれて高校生交流を行った。また、9月12日の夜は当財団林会長主催の「歓迎の夕べ」に3校の代表(生徒代表、校長、教頭、教職員代表を含め各校20名ずつ)をはじめ、文部科学省、外務省、東京都教育委員会、中国大使館など関係者が出席して200名の盛大なパーティが行われた。
日中双方が当交流を高く評価 外務省の表敬では日出政務官が会見し、「この交流は98年の江沢民国家主席来日時に時の小渕総理との間で取り決めた交流だ。小渕さんは国交正常化を果たした田中元総理の直属の政治家であったし、日中間に良好な関係をつくろうと努力された。今後皆さんにも日本に留学してもらいたいし、日本の青年たちにも中国に行ってもらいたいと思っている。日本での交流を通じてよい友人をつくり日本をよく見てもらいたい。特に日本は東京と地方の格差が少ないところをよく見てほしい」と歓迎の言葉を述べた。
曹団長は「全国3、000万人の高校生から100名を選抜するのは大変なことで、選ばれた彼らは大変光栄なことであり、責任も重い。彼らは訪日前にかなりな準備をしてきたし、帰国後もレポートを提出しなくてはならない。第1回から第5回目まで500名の高校生が来日しており、第1回と第2回目の団で訪日した生徒はすでに日本に留学生として来た者もいる。彼らは日本で見たことを周囲にも紹介しており大きな役割を果たしている。交流目的は充分果たしているのではないかと思う」と交流意義について強調した。
また、東京で開催された「歓迎の夕べ」では文部科学省高塩高等教育局審議官が歓迎の言葉のなかで「日本から中国を訪れる高校生は4万人以上に及んでいる。このように両国の高校生交流は両国の友好親善にとって欠かすことのできないものとなっている。訪日団の方には大いに楽しんでいい思い出をたくさん作っていただき、帰国してから両国の大きな架け橋になってくださるよう大いに期待している」と日本からの高校生訪中団が増加している現状を報告し、訪日団にも将来の両国間の担い手として重要な役割を果たしてほしいとの期待を語った。
東京、神戸で高校生と交流 東京での高校生交流は東京都教育委員会のご協力のもと都立3校での歓迎交流会、授業参加、部活動参加などで活発、友好的に行われ、また、東京プリンスホテルでは日中双方の高校生が歌や踊りを披露して盛り上がり、若さ溢れる楽しい雰囲気の国際交流を大人たちも頼もしく見守った。
神戸の交流は、兵庫県教育委員会のご協力のもと県立舞子高等学校生が参加して、歓迎昼食会で双方が顔合わせをしたのち、日中双方160名が明石海峡をクルーズする船に乗り込んで交流が行われた。高校生交流に先立ち、一行は「人と防災未来センター」を参観したが、県立舞子高等学校には日本で初めて防災学科が設けられており、生徒たちは95年に6、000人の犠牲者を出した阪神・淡路大震災の体験をその後の生きる教訓にし、海外の高校生との交流テーマにしていることを紹介した。
広島を訪問、二つの世界遺産を参観 広島を訪問した一行はまず平和公園から原爆ドームを眺め、平和記念資料館を参観、その夜は瀬戸内海の静かな海に面した広島プリンスホテルに1泊した。内陸省から来た中国高校生は海辺の風景に酔いしれて夜遅くまで海の美しさを堪能した。翌日は宮島に渡り厳島神社を参観、青い海、赤い鳥居と社、緑の松の周辺で遊ぶ鹿ののどかで美しい風景に感動した。平和公園ならびに厳島神社はともに人類の遺産として世界遺産に登録されている。悲惨な原爆の被害から立ち直って日本を代表する近代都市に生まれ変わった広島の都市と、海に立つ神社としては1、500年の歴史をもち、朱塗りの神殿を平清盛が造営して800余年の歴史を誇る美しい文化遺産は中国高校生につよい印象を残したようだ。 なお、この他毎回訪れる古都の京都では神泉苑の「よかろう太鼓」の演奏に感動し、自ら太鼓を叩いて楽しんだり、伝統工芸「しぼり染め」の体験学習では、引率教師生徒もそれぞれ出来上がった自作のハンカチを広げて大いに満足げであったことも一行にはよい思い出となったであろう。