「大国にふさわしいハードを実感して」 今回の日中映像交流事業による訪中の経験はありきたりですが非常に有意義なものでした。 CCTVでは圧倒的な資金力をもって、しかも日本の国営テレビ局とは比べものにならないほど国に寄り添った立場で番組を作る姿に素直に驚きました。強い意志と向上心をコレでもかというほど感じました。特に、フランス語、ポルトガル語、スペイン語のグローバルニュース番組の存在はもっとも衝撃をうけた話でした。それらの番組が国内では放送されず、かつてそれらの言語の国に占領された地域にむけて中国からみた世界のニュースを流す(このことをはっきりと言ってくるCCTVのQさんにも驚きました。その姿勢は見習わなくてはならないものです)という戦略は日本には真似できない、しかし国益になるものだなと感じました。これができてしまう体力と押しがある中国に、日本は正攻法では勝てないだろうと素直に感じました。 今後、映像世界は中国を中心に動く可能性はかなりあるでしょう。ただし、それは中国が主導になる場合と、中国というハードを西洋諸国が利用する場合の二つに分けられると思います。そして私は後者の可能性が高いと今回の訪中で強く感じました。中国には圧倒的なハードが存在していますが、ソフトはまだまだ先進諸国には追いついていません。そこに日本の勝負できる場所があると思いました。 自分は中国に行って隣人の圧倒的な力と、今後の日本のメディア産業がどう動くべきなのかを見て、考えてくることができました。それらが自分の今後に生かすことができるようにしたいと思います。何より、向上心豊かな中国の学生と触れたことが最大の成果でした。自分も負けないよう精進しなくてはならないと強く思うことができたのはとても大きいです。この気持ちを絶やさぬよう、今後もがんばって中国でも通用するような映像作品作りを頑張りたいと思います。 「国と若者」 私は中国訪問前、ここ数年の中国経済や映像業界の成長の理由と現状を知りたいと考えていました。一般的な中国観光では絶対観られないであろうさまざまな施設を巡るこの旅は願ってもない機会でした。そんな旅の中、印象に残っていることは「CCTV視察・北京電影学院訪問」と「中国の大学生との交流」です。つまり「国の考え」と「未来を担う若者の考え」の二つを垣間見られたことです。 映像施設に関してはやはりスケールの大きさとマンパワーに圧倒されました。映画館で半分は自国映画を上映するというやり方や海外TV番組を規制するという中国の自国の文化を守りつつ、「まずは実行する」というフットワークの軽さで海外(ハリウッドや日本アニメ)の技術を取り入れていく二つのスタイルそれぞれの規模が強力です。大人向けの中国アニメ、TVの専門チャンネルを国が率先して提供していました。 一方、大学生との交流でまず驚いたことが「若者はTVを観ない」という現実です。日本の場合、流行の発信源はTVです。そこからアニメや映画などが宣伝され広まっていきます。最近の日本もですが中国の若者はPCで映像を見て情報を入手するそうです。「TVは面白くないから、見たい海外ドラマをPCで探して観ている」と言っていたのには驚きました。そんなTVの力なしで若者の流行を生めるのか?と疑問に思いました。中国の若者にとっては国の作る文化のあるコンテンツは古臭く感じるのかもしれません。海外TV放送は規制するのに海外映画の海賊版DVDを規制しない(しきれない)のは問題かなと思います。 このように二つの考えの違いのズレ、「自国の作品がすごく面白い」と素直に言えない現状が進歩の枷となっているのかなと思いました。もちろん中国の素晴らしい作品も数多くあると思います。逆に近年の日本は「流行」に敏感なので常に売れるものを作りつづけるというので、若者に受けは良いと思いますが、日本らしさという古来の文化を残せているかといえば弱いのかもしれません。今後、中国の国と若者の意思そして海外の意思がマッチしていくのであれば、人口13億という世界一の市場の持つ可能性は脅威であると思います。 中国の学生は日本のドラマ・アニメなどをよく知っていました。逆に日本人の僕らは中国のメディアコンテンツをほとんど知りません。知る術が少ない現状です。これでは日本の成長につながらない。いつまでも提供できる立場であれるはずはないので、他国のことをよく知るべきです。お互い自信をもって提供できる作品が多く作られていくようになれればと思いました。 今回の訪問で中国という国の一部ですが、触れることができてとても光栄でした。しかし私はまだまだ中国のことを知らないので、今後の発見で上記の意見が変わっていくだろうと思います。それは逆に日本を訪問したことのある中国の方々も一緒だと思います。同時に日本の他大学の学生とも触れ合えて刺激を受けました。大学生にとって大事なのは「余りある時間の中で如何に他人・他の世界を知るか」だと思うので、今後ともこのような機会が増えることを願います。 関係者の皆様、団員の皆様貴重な経験をありがとうございました。 「日本と中国の撮影環境」 私が今回中国訪問で最も印象に残ったことは、北京と上海の撮影所見学です。 私は日活芸術学院に在籍していて、私達の学校は日活の撮影所の中にあります。普段から撮影所を見ている者からしても、中国の撮影所はまずその広さに驚かされました。北京の撮影所には16のステージがあると説明を受けたのですが、そのステージ一つ一つが大きくその敷地内はバスで移動しなくてはならないほどでした。その上所内には高級ホテルまで完備していて日本とは撮影する環境がかけ離れているなぁと感じました。スタジオはもちろんですが何より日本と違っていたのはオープンセットです。北京でも上海でもまるでそこに一つの街があるかのような大きなオープンセットにとても感動しました。どちらも少し古い時代の中国の街並みで上海ではセットの中を電車に乗って移動しました。日本では古い街並みを再現するのに美術の方々が一から作り上げなくてはいけないのですが、中国では基礎ができているからとても広大な作品ができるのだなと思いました。 上海では幸運にも実際に撮影現場に遭遇することができました。私は中国を訪れる前にテレビや新聞などで反日デモなどのニュースをたくさん観ていました。だから正直中国を訪れる前はデモに巻き込まれないだろうかという大きな不安がありました。しかし実際に撮影所で会った中国の方々はとても優しく、私達がカメラを向けてもピースサインや笑顔で答えてくれました。私は学校ではスクリプターコースという映画の記録のコースに所属しているのですが、その現場で女性のスクリプターの方にお話を聞くことができました。撮影の合間にも関わらず、私が2~3質問をしても笑顔で答えてくれました。 私の中国の方々の印象は180度変わりました。テレビでは中国人は日本人のすべてが嫌いなのかと思わせるような報道もありましたが、実際はスーパーなどでは日本の製品はたくさん売っているし、北京電影学院や上海外国語大学の生徒は日本のアニメやドラマが大好きで通訳なしで会話ができたことに驚かされました。やはり日本人も中国人ももっと接する機会を持つべきだと思いました。中国の方々と実際にお話をしてみて思ったのは、国籍はどこであろうと同じように映画やアニメが好きであれば国の問題は関係ないのだなぁと感じさせられました。 今回の中国訪問での一番の収穫は、今後は日本だけでなく中国の方々にと映画製作を行ってみたいという夢ができたことです。このように思わせてくれた中国訪問というチャンスをくれた全ての方に感謝したいです。