H23 日中次世代幹部交流訪日団第1陣 都市と農村視察団 団員の感想
●日本での6泊7日の研修と視察を通して、今回の研修の受け入れの体制は綿密に整えられており、手配が行き届いていると感じた。そこには、先進国の人たちの仕事の効率の良さや細やかさ、よりよいものを目指して一生懸命に働く心構えが十分に表れていた。その仕事ぶりや打ち込む姿勢は、我々が学ぶに値するものである。 千葉県における視察では、日本では農業関連施設が整備されていると実感した。ほぼすべての農地が区画整理され、水利施設が完備している。道路網も整備されており、各農家の玄関先まで道路が敷設されているばかりでなく、田畑の間にまでアスファルトの農道が敷かれていた。これは、農業機械の走行や、農家がさまざまな生産活動を行う上で大変便利である。 北海道では、サッポロさとらんどの体験農園や北海道農業研究センターでの視察と学習を通して、農業者と地域の消費者が相互の繋がりを深めることの大切さを感じた。一般市民に農業を体験してもらうことや、食卓に上る食べ物の生産プロセスを知ってもらい、農業者の苦労を理解してもらう取り組みは、農業への予算投入や支援政策を強化すると共に、農業を発展させ、農村と都市の調和的な発展を促していく上で、大きな意義と影響力を持つものである。 ●今回の訪日を通して、私の日本に対する認識は大きく変わった。 一つ目は、日本の農業の発展に関する認識である。日本の農業の発展において、農協は極めて重要な役割を果たしてきた。農協は民間組織でありながら、本来政府が果たすべき多くの機能を担ってきた。多数の農家の力を結集させることで、農家の利益を守ると同時に農家との間にウィンウィンの関係を築いた。 二つ目は、日本では農業者(生産者)と消費者の交流が重視されており、地域の消費者に農業への理解を深めてもらうために多くの取り組みが行われているという点である。中でも特に若い世代に対するアプローチが重視されている。 三つ目は、日本では食の安全の分野においても、さまざまな取り組みが実施されている。この点は特に中国が学ぶに値するものである。政府によるGAP(農業生産工程管理手法)をはじめ、生産の現場である農家や農協の安全に対する意識と具体的な対策は、どれも大いに参考になった。GAPは中国の農業標準化生産に類似しているが、我々の標準は詳細さに欠け、普及を進めるには、なおも多くの課題を抱えている。 ●私は今回初めて日本を訪れた。この訪問で、日本の農業政策とその実施状況、農業技術の研究と普及、農協と農家の関係及びその歴史と実質的な役割について理解を深めることができた。中でも特に印象深かった点を以下に記す。 (1)日本の農業政策の枠組みはよく整っており、政府と農協が相互の連携を充分に取りながら、農業政策を末端にまで浸透させると共に、技術研究の成果を現場に普及させている。「ラストワンマイル」の実施がうまくいっている。 (2)日本では都市と農村の差が小さく、両者が一体になっていることに驚きを覚えた。農業と商工業、都市と農村が緊密な連携を保ち、異なる階層間や利益集団間、産業間の収入格差が小さく、教師等が農村で就業することが奨励されている。農村における公共サービスの仕組みも整っている。農作業の機械化が進んでおり、第一次、第二次、第三次産業の連携が密である。 (3)日本の農業技術は実用的で効果が高い。技術研究の成果等は生産現場や市場のニーズに沿い、かつ長期的視野に立ったものであるため、支援と指導の役割を確実に果たしている。日本は国土が狭いにもかかわらず、土地等を含む多くの資源が農業研究機関に提供されていることは、政府が研究事業を重視していることの表れであると感じた。 (4)日本人の勤勉さや仕事に対して誠実に取り組む姿勢は、大変印象的だった。その他にも、政府の国民側に立った実用を重んじるスタイルや、企業の社会的責任への意識の高さ、国の経済・政治・社会が相乗作用を及ぼし合うシステムも印象に残った。 ●(1)視野が広がった。研修を通じて、日本の風土や人間性、歴史、文化、経済、社会について学んだことで、視野を広げ、意識を高め、思考の幅を広げることができた。 (2)見聞を広めた。研修を通じて、日本における先進的農業の推進分野及び経済分野での協同組織、農産品加工技術、食品安全管理、環境にやさしい農業、都市と農村を一体的に発展させる考え方、進んだ管理理念等について理解を深めた。これらの知識や技能は、日常の業務においては学び得ないものである。 (3)ヒントを得た。研修を通して、我が国や我が省の現代農業と都市と農村の一体化の実践について改めて考えさせられた。法体系、制度設計、支援政策、発展の方向性、管理理念、具体的な対策等の各方面でさらに改善すべきところがあると思う。我が国や我が省の経済と社会の発展を促す上で重要と思われる方法や考え方を学ぶことができた。 (4)感性が磨かれた。日本の青年たちとの交流を通じて、中日の友好を深め、経済と社会の発展を促し、中日の協力の輪を広げるための土台をつくることができた。中日の青少年の友好は、我が国の平和的な発展や、両国が共に発展のために大きな役割を果たすと考える。 このように素晴らしい交流と学習の機会を与えられたことに感謝する。しっかりと学び、自らを省みると共に、戦略的な視野に立って学んだことを実際の仕事の中に生かし、社会と経済の発展のために貢献していきたい。 ●(1)環境保護について、日本では「環境保全」という言葉を用いる。「保全」という言葉は「保護」よりもさらに広い意味を含んでいると思う。日本を訪れてみて、都市にしても農村にしても整然としており、きれいで落ち着いた雰囲気があるという印象を受けた。 (2)都市と農村の格差については、環境、交通、住宅、社会保障等のいずれの面においても小さいと感じた。 (3)政府の農業支援政策については、日本政府は農業の戦略的な位置づけを大変重視しており、行政による指導、即ち計画経済と市場経済の統合を非常にうまく行っていると感じた。社会のためになる公共財やサービスの分野に対し政府が予算を投じて指導を行い、農業者の自治や市場メカニズムによって解決可能な事柄については、民間に任せている。 (4)農家の組織化が進んでいる。農協が大きな役割を果たし、広く信用を得ている。 (5)政府による民間組織の支援と活用が成熟している。 (6)環境保全を重視している。 ●(1)中日両国には異なる点も多いが、つまるところは一衣帯水の間柄であり、地理、文化、経済、政治の面で密接な繋がりがある。友好は互いの恵みとなり、不和は互いを損なうことになる。共に繁栄するという理念を貫くことが、進むべき唯一の道であると思う。 (2)今後世界は、人口爆発、エネルギー不足、食物危機、金融不安等の共通の難題に取り組むことになるが、両国はアジア最大の先進国と開発途上国として、進んで自らの責任を果たし、アジアが難局から脱し、世界における確固たる地位を築くことがきるように共にリーダーシップを発揮していくべきである。調和ある発展を目指すアジア的理念が、欧米の自己意識の思想に取って代わり、アジア的なやり方が世界中に広まっていくよう望む。 (3)日本と中国は共に、人口一人当たりの資源量が少なく、今後の資源開発の可能性にも限りがある。従って、経済や社会の成長方式を転換する必要がある。国内の共和に重点を置き、西側諸国への依存の道に進むことは避けるべきである。 (4)農業を将来性のある産業ととらえ、この領域で中日両国は一層交流を深め、アジアに先進的な農業を打ち立てる道を共に切り開くべきである。農業分野における欧米の独占的集団の勢力拡大の画策に両国が力を合わせて対抗していくため、日本には、その進んだ農業の理念や技術管理、文化等を以て中国の農業の発展を支援してほしい。 ●(1)日本は環境がすばらしく、緑被率が高い。各地域の状況に応じて、限りある土地にできるだけ多くの緑地を確保しようとしている。環境は美しく、空気はきれいで、社会秩序が保たれている。特に鉄道、道路、空路が発達しており、交通がとても便利である。道路の幅は狭めだが、ほとんど渋滞に遭わなかった。 (2)日本人の仕事や生活における姿勢には感服した。向上心が強く、仕事に関しては少しもおろそかにせず、ベストを尽くす。日本人は我慢強い。軽んじることのできない民族であり、我々が大いに学ぶべきものを持っている。 (3)都市と農村の一体的な発展に関しては、日本では都市と農村の差がほとんどないと感じた。農業は、数多くある職業のうちの一つにしか過ぎず、差別や軽視の対象となるような業種ではない。政府もさまざまな農業振興政策を打ち出している。日本では農作業の機械化が進み、生産効率が高い。日本は多くの面で中国よりも優れているが、体制や国情が異なるため、すべてをそのまま中国に採り入れるのではなく、適用可能なものを選んで導入していくことが必要だと思う。 ●(1)日本では農業の弱体化という趨勢の下、強い危機感を持つと共に、次世代を担う農業人材の育成に力を入れており、これは先見性のある取組みだと思う。中国では、農業用地と農業労働力の減少という覆し難い情勢に直面しており、財政政策も含め、各方面からの先を見据えた調整を行う必要に迫られている。 (2)日本が農業の産業化を進める上で重要な支えとなったのは、業界団体であった。中国においてもすでに農民専業合作社の推進に着手はしているが、日本とはまだ大きな隔たりがある。日本のやり方のうち、中国の国情や社会及び政治の体制に合うものを参考としながら、システム、発展のための条件整備、政策による支援等の面から、合作社の産業チェーン型連合や地域型連合を力強く後押しする必要があると思う。 (3)日本において都市と農村の一体的な発展を進める上でベースとなった協同・対等交流の理念と方法について、学ぶところがあった。中国では現在、「観光農業」、「景観農業」、「文化農業」を振興しているが、商業化が過ぎる傾向にある。民間資本が経営に投じられるよう引き続き奨励を行う一方で、政府の公益的な指導と支援を強化する必要がある。サッポロさとらんどの農業体験交流施設のような運営方式を検討し、モデル事業として実施することも可能であろう。そしてさらに重要なことは、都市と農村の若い世代に対してどのような方法で農業に関する教育を行っていくべきかについて検討を進めることである。 以上は本研修の目標に関連した感想であるが、それ以外では、日本人が物事に一生懸命に取り組む姿勢や仕事ぶりの細やかさに感心した。これは中国が特に手本とすべき点である。しかし、細やかさが過ぎると発想に影響を及ぼし、社会全体の創造力を抑制してしまう可能性もあるので、手本とする場合にも程合いを考えるべきであるとは思う。 ●農業協同組合の運営方式は、中国の畜産地域における集約化や、合作社の発展を促す上で参考になると思う。北海道は畜産業振興において生態に基づく環境保護の見識が豊富に蓄積され、中国で普及するに値するものである。 また、国民の資質が高く、都市の交通秩序が守られている。仕事の効率が高く、謹厳である。 中国の畜産地域における農業体験交流施設の経営は粗放経営であるため、資源と経営の集約化を図るべきである。 ●(1)日本では生産地での水稲や野菜の加工が盛んである。これは、農作物の収穫後の損失を少なく抑えることや、農産物のブランド化を進める上で有効であると思う。 (2)日本の農業協同組合はシステムが整っており、農家に対して全方位的なサービスを提供している。それにより、農家の分散した生産形態と大市場を効果的に結び付けることや、農業生産の標準化や技術の普及を推し進め、農家全体の技術レベルを向上させることが可能になった。 (3)北海道では農業生産を重視すると共に、農業の多面的機能を開発することも重視しており、生産者と市民をつなぐ取り組みを展開している。たとえ農業体験や交流を目的とした施設であっても農場での農作物の生産を中心に据えているため、多額の資金を投じなくても、その役割を果たすことができている。我が国の都市型観光農業の経営に参考となる方法である。