公益財団法人 日中友好会館 JAPAN-CHINA FRIENDSHIP CENTER
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総合交流部
 

2010日本教育関係者訪中団(第16回都道府県教育訪中団) 団員の感想

 
 


「日中の教育制度で感じるもの 」

  訪中を通して強く感じたことは、日本と中国の学校教育制度そのものの違いと、生徒の意識の違い、そしてその背景にある保護者の意識の違いでした。基本的な学習内容等は日本同様、国で整備されてはいましたが、北京では教員は学校が採用し、ランクがあること、都市部のよい学校に力のある教師、生徒が集まること、生徒は自分に箔が付くことを望むことなど、学歴や能力で大きな差が付いてしまうことが当然のように幼少期から続いている現実に直面しました。
  その中でも、学校に通っている子どもたちは自分の目標を定めて前向きに学習に取り組んでいました。小学校や少年宮の子たちは、学習自体を楽しみ、自分の力を付けていくことに喜んでおり、高校や大学の生徒たちは、自らの夢や希望をもって前へと進んでいました。日本においては学習を必要とは理解しながらも「やらされているもの」と感じる子もおり、意欲も低下しがちであるように感じます。内容は考慮する必要がありますが、目標と意欲によってやる気の出方にも違いがあるのだろうと考えさせられました。中国式の学歴や能力を子どもに要求するのは日本には合っていないかもしれませんが、目標や意欲、必要性に迫られる気持ちなどは日本の子どもたちに伝えたいところです。また、日本においては、都市部農村部を問わず、どこでも同じ内容の教育が受けられたり、教員の異動により教育の質の均等が図られていたりするため、学校間格差や教員の差は基本的に存在しません。そこが日本のよさであり、教育環境の行き届いているところなのだとも思いました。
  吉林大学での話や交流から、ひとつのことを極めるようなプロフェッショナルや専門家を育てる中国と、幅広く柔軟な人材を育てる日本というイメージを抱きました。どちらの方向性が正しいというわけではなく、どちらの方向性も必要であると思いましたが、それでも両国とも就職に課題を抱えているという現実があります。学習面、社会性など両面から人間を育てていくという点では、日中共通の課題なのではないだろうかと思いました。
  今回の訪中では、小学校から大学まで多様な校種や子どもたちを見せていただきました。また、 文化面に関しても歴史的建造物等も見学させていただき、中国のスケールの大きさや歴史に関しても学ばせていただきました。すばらしい各都道府県の方々と共に、多くのことを学ばせていただいたことに感謝いたします。今後の教育活動や生活に生かせるように心がけていきたいと思います。
(小学校教諭)


「2010年日本教育関係者訪中団に参加して」

  9月11日(土)から18日(土)、8日間の日程で訪中団に参加させていただいた。北京・長春・上海の3都市を訪れ、変化の中で発展する中国を目の当たりにした。経済大国としての地位を確立し、国際数学オリンピックでの優勝や大学院博士号の高取得率など教育面での成長も著しい。8つの教育機関を訪問させていただき、日中両国の教育理念と実践に関する有益な情報交換を行うことができた。その中で、最も強く感じたのは教育に対する“熱意”である。中国の教育に対する関心は想像以上に高く、一人っ子政策がそれに拍車をかけているように感じた。厳しい競争社会の中で、より多くの知識や技能を修得し社会的な成功を収めようとする子ども達・保護者の“熱意”、彼らを全力で支える教師たちの“熱意”、国力=教育力であり教育改革こそ最優先事項であるとする中国教育部の“熱意”である。
  中国で教師は、『魂のエンジニア』と呼ばれる。そう教えてくれた現地の教師は、教職2年目を経て国の将来を担う人材育成に携われることに誇りを感じていると語ってくれた。少年宮での課外活動に加え、学校教育では早期から討論やプレゼンテーション、外国語教育を導入している。グローバルな視点に立ち、国際社会で活躍するエキスパートの育成に重点が置かれている。また、各学校に明確な教育目標があり、学校の特色や教師の資質に応じた多様な教育活動が実践されている。産学連携や研究姉妹校の制定などはその一例であり、人的な交流を通して、良質な教育を積極的に取り入れようとする姿勢が見られた。国内の教育全般を統括するのは中国教育部であるが、これらの取組を推奨する柔軟性と判断力が、教育力を高めている一因であろう。一方で、若年層のコミュニケーション能力の低下や、教育格差など両国が抱える課題について相互理解と意見交換を行う機会にも恵まれ、学びの多い交流となった。
  日中関係の非常にデリケートな時期に訪中し、さまざまな報道を耳にするたびに現地で温かく迎えてくださった方々、とりわけ子どもたちの笑顔が思い出され心を痛めたが、それゆえに今回見聞したことを実体験として伝えることの意義を痛感している。『中国と日本は地理的に近く、歴史的にもお互い良い事も辛い事もたくさん共有してきた。だからこそ同じアジアの民族として、今友好的になれないわけはないんですよね。』という吉林省で同行していただいた金さんの言葉と笑顔を私は一生忘れられない。今後もこの交流事業が両国国民の心の距離を縮め、安定的でより良好な関係を築く一歩となることを願っている。
(高校教諭)


「瞳輝く子どもたちと出会って」

  高層ビルが建ち並ぶ町、多くの買い物客でにぎわう繁華街、何車線もある広い道路にあふれ出る車…。「これが、急速に経済を発展させ、世界から注目を集める中国なのか。」との思いから始まり、自分の目と心で中国を感じ取ることができた8日間でした。行く先々において、社会全体の力強いエネルギーが伝わってきました。とりわけ、各学校において目を輝かせて学習する子どもたちの姿や情熱をもって指導する先生方の姿が心に残りました。厳しい競争に打ちかって、自分(子ども)の夢を実現していこうとする姿に、日本の教育も学ぶべき点があるのではないかと思いました。
  東北師範大学附属小学校では、子どもたちが表情豊かに歌を歌ったりリズム打ちをしたりする音楽の授業や、仲間とかかわり合って実験を行い堂々と発表する理科の授業を参観することができました。教師が全身を使ってエネルギッシュに指導しており、このような先生方と日本の先生方が授業の在り方につい交流して学び合える機会があるとよいと思いました。
  北京市第十九中学校では、広い運動場、天文施設、10万冊の蔵書のある図書室など素晴らしい施設の中で、文武両道をめざした多様な教育が展開されていました。生徒の心理面でのケアを充実させていこうとしている点では、日本の学校と共通する課題をもっていると感じました。
  長春日章学園高等学校の国際留学科の生徒たちは、とても上手に日本語を話していました。そこには、夜遅くまで寮で自習する生徒をサポートする教師の情熱的な指導がありました。生徒たちは、「弁護士になりたい」「日本の会社で働きたい」と夢をもって日本語を学び、日本への留学を楽しみにしていました。また、クラス内で時々笑いがあり、楽しく温かい雰囲気を感じました。
  吉林大学では、東北アジアの平和に貢献する大学連携の拠点として重要な役割を果たそうとしていました。日本語学科の先生の「日本語を話すことができる生徒ではなく、日本が分かる生徒を育てたい」という言葉が印象的でした。互いの国の人々の生活の様子や考え方などの理解があって、言葉を通しての交流が一層深まるのだと感じました。学生の「日本語は難しくて、本当は勉強は好きではない。」という素直な感想にも好感がもてました。
  長春職業技術学院では、企業と連携し、社会の要請にスピード感をもって対応している点に学ぶべき点が多くありました。生徒が企業を運営したり、ガイドを養成するために学校がバスを保有し観光地などで実践したりするなど、学校と企業が一体となっていました。日本語を学ぶ学生はとても前向きで、学生との1対1の交流は、とても有意義な時間でした。
  北京市西城区少年宮においても、歌や踊り、絵画や書道に取り組む子どもたちの瞳が輝いていました。一人一人の個性を伸ばしていく教育が展開されていました。
  本研修のなかで出会った子どもたちの輝く瞳は、忘れることのできない大切な宝物となりました。今後、中国で学んだことを生かして岐阜県教育の充実に努力するとともに、微力ながら日中教育関係者及び青少年の交流活動等に協力していきたいと思います。
  最後になりましたが、お世話になりました関係の皆様方に心より感謝申し上げます。
(県教育委員会所属)

 
   
 
 
 
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