平成22年度中国高校生訪日団第1陣が来日 岩手・埼玉・東京・千葉・石川・和歌山・長崎で交流
「21世紀東アジア青少年大交流計画(日中21世紀交流事業)」の一環として、5月18日より26日まで、平成22年度中国高校生訪日団第1陣(姜振泉総団長、王群瑛副団長、一行総勢297名)が来日した。同団は北京市、吉林省、江蘇省、陝西省、江西省、寧夏回族自治区の1市4省1自治区から選抜されたメンバーで、Aコース148名を当財団が、Bコース149名を財団法人日本国際協力センターが担当し各地で交流を行った。 同団Aコースは5月18日に成田から入国し、8泊9日の日程を東京でスタートさせた。翌19日にセミナーを受講、外務省を表敬訪問し、その後歓迎レセプションに出席した。 セミナーでは、高原明生東京大学大学院法学政治学研究科教授による「日本人と中国人――なぜ誤解が生じるのか」をテーマとした講演を聞いた。日本の高校生たちとの交流を直前に控え、日中両国がどのように双方を理解すれば誤解なくつきあっていけるのか、どのように発展を続けていくべきかというテーマについて、身近なところから考える良いきっかけとなった。また外務省では北野充アジア大洋州局審議官を表敬訪問し、中国高校生からは「日本国民と中国国民とはどういう関係が理想的か」「中国の第一印象と、その後実際接した後の違い、中国の青少年に対してどのような印象を持っているか」などの質問が出された。 続く歓迎レセプションはA、B両コース合同で行い、吉良州司外務大臣政務官、浅野勝人参議院議員、山花郁夫衆議院議員、浜本宏衆議院議員、近藤昭一衆議院議員、孫建明中国大使館公使参事官ら来賓を含め、総勢400名近くが参加する盛大な会となった。吉良州司外務大臣政務官からは、「日本と中国、お互い人と人とが触れ合えば好きにならないわけがない。日本を好きになって母国に帰り、ありのままの日本を是非伝えてほしい。そして世界の平和と発展のために活躍してほしい」と期待が述べられた。両国高校生によるパフォーマンスでは、東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校が琴や尺八の演奏を披露、また中国側は江西省の高校生が伝統的な歌と民族楽器演奏、舞踊、書道を融合したパフォーマンスを披露した。力強く「中日友好」と認められた作品に、会場から大きな拍手が送られた。 充実した学校交流とホームステイ 20日からは4コースに分かれて各地を訪問した。第1分団は岩手県、第2分団は和歌山県、第3分団は石川県、第4分団は長崎県で学校交流、ホームステイを含む交流を行い、各地で熱烈な歓迎を受けた。また、日程後半にはそれぞれ第1分団が埼玉県、第2分団・第4分団が東京都、第3分団が千葉県で学校交流を実施した。各自治体及び教育委員会、受け入れ校の協力を得て、岩手県1校、和歌山県3校、石川県3校、長崎県1校、埼玉県1校、東京都2校、千葉県1校の計12校での学校交流、ホームステイを実施した。 学校交流では、受け入れ校ごとに工夫を凝らした多彩なプログラムに参加した。授業や部活動体験のほか、日本と中国の高校生活について意見交換をしたり、うどん作りやTシャツの藍染などにも挑戦した。今回訪問した学校は、中国の学校と姉妹校提携をしている、または中国語の授業を設定している学校も多く、中国語を学習している日本の高校生たちとの交流では、お互いが時には先生になり、生徒になるなどして、交流の輪が広がっていた。 ホームステイは、交流した日本高校生の家庭を中心に金曜日の夜から土曜日にかけて実施した。初めは緊張した面持ちで対面した中国高校生たちだったが、ホスト生徒とはあっという間に旧知の仲のごとく打ち解け、出迎えにきた日本のお父さん、お母さんにも即席で覚えた日本語で挨拶を交わしていた。各地の自然を満喫したり、自宅でゲームや花火をしたり、ゆっくりショッピングに出かけるなど、楽しいひと時を過ごした。 各地でのホームステイ解散式では、日本の友人との別れに抱き合い涙を見せる場面も見られ、たった一晩とはいえ、彼らにとって生涯忘れられない思い出として刻まれたようだった。帰りのバス車中でも、中国高校生たちは興奮冷めやらぬ様子で、お互いの体験を語り合い、写真を見せ合う姿が見られた。各家庭で心のこもったもてなしを受け、「言葉が通じず最初は不安だったが、言語の違いは実は問題ではなく、心から向き合う気持ちが大事だと実感した」「今度は是非彼らに中国を訪ねてほしい」との感想が述べられた。 教育委員会を表敬訪問 学校交流に先立ち、石川県では教育委員会を表敬訪問した。中西吉明教育長から、中国青海省地震に対するお見舞いと上海万博開幕の祝辞に続き、「石川県での学校交流やホームステイを通し、言葉の壁を乗り越え、同世代の日本の友人たちがどのようなことに関心を持ち、どのような高校生活を送っているか感じ取ってほしい。感性豊かな若いみなさんが異文化に触れ、相互理解の促進に努めることは大変意義深く、この訪問を通して、日中友好の架け橋となり、国際社会で活躍する人材に成長してほしい」と中国高校生への期待が述べられた。 そのほか、一行は各地で中尊寺や厳美渓、和歌の浦、兼六園、太宰府天満宮、九十九島など名所旧跡や自然景勝地を参観したほか、蒔絵、金箔貼り、江戸風鈴制作などの体験を通し、日本の伝統文化の一端に触れた。また環境・防災学習として、中央防波堤埋立処分場、福岡地区水道事業団「まみずぴあ」、目黒区地震の学習館を参観した。普段はあまり意識していなかったごみの分別や減量、また中国でも深刻化している水問題について認識を新たにするとともに、日本の先進的な技術と設備、地方自治体や市民の取り組みに感心していた。目黒区地震の学習館では、いざ自身が震災に遭遇したらどうするべきかを考えながら、職員の説明に熱心に耳を傾けていた。 全ての交流プログラムを終了し、Aコース148名は多くの成果を携えて、5月26日に成田より帰国の途に着いた。本事業の実施にご協力頂いた外務省、文部科学省、中国大使館、各自治体・教育庁・教育委員会、学校関係者、受入関係機関等の皆様に厚く御礼申し上げたい。 (総合交流部)