「21世紀東アジア青少年大交流計画(日中21世紀交流事業)」の一環として、2010年9月7日より15日まで、平成22年度中国高校生訪日団第3陣(段成鋼総団長、任兵副団長、一行399名)が来日した。同団は北京市、上海市、重慶市、甘粛省、貴州省、江蘇省、福建省、広西チワン族自治区の3市4省1自治区から選抜されたメンバーで、Aコース199名を当財団が、Bコース200名を社団法人日本中国友好協会が担当し各地で交流を行った。同団Aコースは9月7日夜に羽田に到着し、8泊9日の日程を東京でスタートさせた。 8日は外務省を訪問し、角南篤政策研究大学院大学科学技術・学術政策プログラム・ディレクターによる「現代日本の科学と技術と社会」をテーマとした講演を聞いた。日本の科学技術が、従来のイメージであるロボット技術のみならず、環境破壊や高齢化社会といった問題解決に向け生かされている現状が紹介され、さらに地球規模の問題については、今後日本と中国が協力して研究をすすめ、問題解決に向けて取り組んでいくことの重要性が語られた。専門性の高い内容にもかかわらず、高校生達は積極的に質問し、今後の日中協力の在り方について、見識を深めたようだった。 続く歓迎レセプションはA、B両コース合同で行い、西村智奈美外務大臣政務官、孫建明中国大使館公使参事官、国会議員の方々をはじめとする来賓を含め、総勢500名近くが参加した。西村智奈美外務大臣政務官からは、「21世紀の日中両国の関係を築いていく若い皆さんに、等身大の日本の姿を見て、体験してほしい。伝統文化の体験や、日本高校生との交流、またホームステイの経験などを通し、自身の目で見た日本を、中国の友達や家族に伝えてほしい」と期待が述べられた。両国高校生によるパフォーマンスでは、東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校がピアノ、フルート、サクソフォーンなどによる管弦楽のトリオ演奏を披露、また中国側は重慶市の高校生が伝統的なモンゴル族の舞踏を披露し、その華麗な踊りに会場から大きな拍手が送られた。 充実した学校交流とホームステイ 9日からは4コースに分かれて各地を訪問した。各自治体及び教育委員会、受け入れ校、国際交流団体の協力を得て、千葉県、静岡県、富山県、滋賀県、京都府、大阪府、山口県、熊本県において学校交流やホームステイを実施した。 学校交流では、授業や部活動体験のほか、日本と中国の高校生活について意見交換をしたり、郷土料理の調理実習や和太鼓演奏などに挑戦するなど、多彩なプログラムに参加した。今回訪問した学校は、国際交流が盛んな学校や、今回の交流をきっかけに国際理解増進に力を入れていきたいと積極的な学校が多く、各校で熱烈な歓迎を受けた。交流の場面では、日中高校生同士、好きなアイドルや自分の趣味、また将来の夢についてなど、同世代共通の話題で盛り上がり、教室からは、楽しそうな笑い声と笑顔が溢れていた。 熊本県では、県立高校再編整備計画により新入生が不在で、2・3年生のみ全校生徒53名の小規模高校も訪問した。中国の高校は、概ね広域エリアを対象に数千名レベルの生徒が在校しているため、中国高校生たちは驚いた様子だったが、生徒一人ひとりと密に向き合う学校の温かい雰囲気も楽しみながら交流していた。 ホームステイは、交流した日本高校生の家庭を中心に、一部地域では、市役所や国際交流団体手配による一般市民家庭で実施した。初めは緊張した面持ちで対面した中国高校生たちも、ホストファミリーと英語や即席で覚えた日本語、また身振り手振りで話をしているうちに、あっという間に打ち解けていた。今回ホームステイを実施した地域には、以前にも、同事業の中国高校生やマカオ高校生のホームステイを受け入れた家庭もあり、来日前からとても楽しみにしていたとの歓迎の言葉に、中国高校生も感激していた。 自由時間には、中国内陸部では見たことがない海を堪能したり、自宅ですき焼きなどの日本食を味わったり、ゆっくりショッピングに出かけるなど、楽しいひと時を過ごした。 別れの場面では、日本の友人、お父さん、お母さんと抱き合い、名残を惜しんで涙を見せる場面も見られた。ホストファミリーからも、「私達が与えたものよりも中国高校生が私達に与えてくれたもののほうが多かった」、「たった一泊二日のホームステイではあるが、されど一泊二日のホームステイ。素晴らしい出会いのチャンスをいただいたことを感謝している」といった感想が聞かれた。日中青少年交流の意義や草の根交流の重要性を、実体験として理解してもらえたプログラムとなった。 そのほか一行は、世界遺産の菅沼合掌造りや、琵琶湖、金閣寺、登呂遺跡など各地の名所旧跡や自然景勝地を参観したほか、和紙すき、友禅染め、千代紙ろうそく制作などの体験を通し、日本の伝統文化の一端に触れた。また環境・防災学習として、東京都の森ヶ崎水再生センター、東京都廃棄物埋立処分場、千葉県の谷津干潟自然観察センター、大阪市の阿倍野防災センター、静岡県地震防災センターを参観した。森ヶ崎水再生センターを訪問したのは、中国全土の中でも極めて降水量の少ない中国甘粛省の高校生で、自身のエリアでの切実な問題だけに、職員の説明に熱心に耳を傾けている姿が見られた。 全ての交流プログラムを終了し、Aコース199名は多くの成果を携えて、9月15日に関西空港より帰国の途に着いた。本事業の実施にご協力頂いた外務省、文部科学省、中国大使館、各自治体・教育庁・教育委員会、学校関係者、受入関係機関等の皆様に厚く御礼申し上げたい。 (総合交流部)