平成22年度中国社会科学院青年研究者代表団第3陣が来日 「WTOとFTA」、「エネルギー安全保障」をテーマに交流
2010年12月6日から12日までの日程で、平成22年度中国社会科学院青年研究者代表団第3陣(団長=金碚・中国社会科学院工業経済研究所所長、副団長=張友雲・中国社会科学院国際合作局副所長)が来日した。 本団招聘事業は、平成19年度より、外務省が推進している「21世紀東アジア青少年大交流計画(日中21世紀交流事業)」に、今年度から700名の交流拡大が決定され、そのうちの1分野として、(財)日中友好会館が外務省から委託を受け実施したものである。7月に第1陣、9月に第2陣が実施され、今回は第3陣となる。 一行は、中国社会科学院の幹部2名、同院及び地方の社会科学院に所属する若手研究者47名で構成され、東京のほか京都・大阪を訪問した。 2日目以降、「WTOとFTA」及び「エネルギー安全保障」をテーマに2グループに分かれ、外務省にて「WTOドーハラウンド交渉」、「我が国のエネルギー安全保障」のテーマ別にブリーフィングに参加したほか、WTOとFTA分団は、小寺彰・東京大学大学院総合文化研究科教授や、渡邊頼純・慶應義塾大学総合政策学部教授による講演と意見交換会、そして日本経済研究センター研究員とのディスカッションに参加した。 同様に、エネルギー安全保障分団は、小林良和・日本エネルギー経済研究所戦略産業ユニット石油グループリーダー、本村真澄・石油天然ガス金属鉱物資源機構主席研究員の講演と意見交換会に参加した。 どの講演も専門性の高い内容であり、両分団とも団員からは質問や意見が多く出され、毎回予定されている時間を超える交流となった。講演終了後も、団員の多くが個別に講師に質問に行く姿が見られ、関心の高さがうかがわれた。 7日夕刻に行われた歓迎レセプションには、渡邊信之・外務省アジア大洋州局中国モンゴル課地域調整官、文徳盛・中華人民共和国駐日本国大使館政治部参事官らが出席した。村上立躬・当財団理事長が歓迎の挨拶を述べ、渡邊地域調整官からも「今後益々、日本と中国は多岐に亘る分野で協力していく必要がある。学術はその重要な一分野であり、このように日中の若手研究者が同じテーマに基づいて意見交換をし合うことは極めて意義がある。また今回の来日を通して、中国の若い研究者の皆さんが、日本に対する理解を深めてくれることを期待します」とメッセージが送られた。 12月7日には金碚団長以下代表者が菊田真紀子外務大臣政務官を表敬訪問した。 このほか首都圏では、両分団共通プログラムとして、外務省若手省員との交流、国会議事堂、東京電力「電気の史料館」の参観を行った。エネルギー安全保障分団は千葉市の新港クリーン・エネルギーセンターも訪問し、ごみの焼却によって発生する熱を利用した「スーパーごみ発電システム」を見学して、日本の最新環境施設について理解を深めた。 京都、大阪で大学教授らとの意見交換に参加 日程の後半は京都・大阪に移動した。WTO・FTA分団は大阪大学を訪問し、内記香子大学院国際公共政策研究科准教授による「『貿易と環境』問題の新展開」というテーマの講演に続き、大学院生の修士論文のプレゼンテーションを聴いた。団員からは内記准教授に対する質問だけではなく、大学院生の発表に対しても多くの意見や質問が出された。大学院生との交流は、専門性に関しては若干の差異がでたものの、学術の道を歩む者同士、両者にとって興味深く、有意義な時間となったようだ。 エネルギー安全保障分団は、京都大学エネルギー理工学研究所を訪問した。尾形幸生所長による研究所紹介と研究の現状説明の後、プラズマ閉じ込め実験装置や材料試験・解析設備など研究施設を見学した。同研究所には、中国人研究員や大学院留学生も数名在籍しており、所長・副所長と共に見学後の意見交換会に参加した。団員の中に理工学の研究者はいなかったものの、活発な意見交換が展開され、研究所が追求する「ゼロミッションエネルギー社会」という概念を、中国もこれから学んでいくべきだという意見が出された。 一行はこのほか、大阪城、京都の清水寺、天龍寺、嵐山の周恩来記念碑など名所旧跡を参観したり、塗り物絵付け体験をしたりするなど、日本文化を体感した。 12月11日に行われた歓送報告会では、団員から専門交流で得られた成果や、参観を通して感じた日本が発表されるとともに、日本側受け入れ機関に対する感謝の気持ちが述べられた。団員からの熱心な感想発表を受けて、谷野作太郎副会長からも、今回の訪日をきっかけに、今後の日中関係の強化に向けて、青年研究者達も尽力してほしいという期待と励ましの言葉が送られた。 代表団は全てのプログラムを終了し、12月12日に羽田空港より帰国の途についた。本代表団の受け入れにご協力いただいた外務省及び関係機関・企業の皆様に、この場を借りて厚く御礼申し上げたい。 (総合交流部)